これから先はもう少し具体的に、いろんなチャンネルで、どのようなことをやっていけばいいのかということをお話させていただきたいと思います。
2002年に横浜で第1回国際ユニヴァーサルデザイン会議が行われました。私はここで実行委員ということでスタートから参加させていただいたのですが、同時にこのときに日本文化とユニバーサルデザインということで、パネルをひとつ持たせていただきました。
風呂敷、最近若い方はあまり使われていないように聞いておりますが、この会議の中で風呂敷は日本が誇るユニバーサルデザイン商品だということを紹介させていただきました。
風呂敷は真四角に近い布ですが、真四角なもの、丸形のもの、一升瓶のような円筒形のもの、いろんな形のものを大変美しく包むことができるし、保存袋にもなるし、時には傘になる。折りたためばポケットに入るくらいコンパクトになる。これに類するものは世界中にいろんなものがありますが、美的にも優れた形で、我々の日本の文化の中に根付いているではないかと思います。こういった風呂敷、これはいわばダイバーシティー、多様性という表現ができるんではないかと思います。
日本の建築というのは、昔から「屋根と柱と床」というのが基本的な要素で、欧米の建築のような「壁」という概念は比較的薄かったようですね。柱と柱との間に戸を入れる。日本には「まど」という漢字が二つあります。「窓」と「間戸」。つまり柱と柱の間を一枚の戸や障子を入れることによって、新しい空間を作り出す。そういった概念がありました。もちろん高温多湿な気候風土というものも反映をしたということもあるでしょうし、個室になったり、大広間になったりするという日本間の良さ。時にはススキの穂やお団子を設えて、その空間の中に情景、風景を作っていくというような文化を我々は作って参りました。空間の自在性というものが、この中から読み取れるのではないかと思います。
「柔軟性」
和服もそうですよね。体の寸法が多少変わっても着ることができるし、調整をするような着方というようなものがあります。帯の多少の変化であれば調整しながら同じものを使うことができる。これは柔軟性という言葉があてはまるのかなと思います。
日本間に住んで、風呂敷をもって、和服で暮らしなさいということを申し上げたい訳ではなくて、我々がこれまで築きあげてきた文化の中にある、柔軟性、自在性、多様性をこれからのものづくりやサービスの中に取り入れることによって、日本らしいユニバーサルデザインというものを作ることができるのではないかと思います。
~洗濯機の例~
このときは洗濯機を例に紹介させていただきました。
洗濯機は大変多機能になってきている。自分なりの洗い方をこまかく設定しておいて、そのとおり洗濯機が作業してくれるというようなものが出て参りました。
それと同時に4~5年前なのですが電気バケツというものを商品化しました。
これはプラスティックのバケツの底にタルセーターと呼ばれるいわゆる風車のようなものをモーターで回す、というシンプルな洗濯機です。
実はこの電気バケツ、意外に高齢者の方にお使いいただいているようです。
私の母も使っております。表に置いて、庭仕事をしたときの軍手で洗うのに使っている。売価1万円程度だったと思います。庭で腰をかがめながら洗わなくても、部屋の洗濯機まで持っていかなくても済む。
あるいは若いお母さん。おしめやちょっとした下着洗い専用に使っている。
この高機能な洗濯機とシンプルな洗濯機、これはどちらも日本的なテクノロジーを生かした商品といえます。機能を沢山盛り込むのは日本の得意技なんですが、反対に私は基本機能に特化をした、非常にシンプルを極めるような、そういうものの在り方を追及するのも一つの方法ではないかと思っています。
そうしますと、使う側がそれぞれ自分の状況に応じて、使い方を工夫していくということになっていくわけです。電気バケツというのはその好例ではないかと思っています。
日本文化の持っている特質というのは、多様性、自在性、柔軟性ということだろうと思います。
皆さんが今関わっていらっしゃる商品開発やサービスにも、そういうものを生かすことによって、他の国にみられない日本らしいサービスやものというものができるのではないかというように思います。シンプルで状況に応じて変化が可能というのが、我々がもつ文化のひとつかなと思うわけです。
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