事例発表「ユニバーサルデザイン体験ワークショップの報告」


写真:井手将文さん

井手将文(いで まさふみ)さん

NPO法人お世話宅配便理事


目次

 01 はじめに

 02 背景となる考え方

 03 ワークショップの仕掛け

 04 実施事例

 05 課題と今後の展開

 

講演要旨

 01  はじめに

 私は、NPOお世話宅配便の井手と申します。
 現在私は、エンジニアですけども、NPOの障害者地域活動支援センターというところに勤務しております。障害をもつ方の残存機能をいかした操作具を工夫したり、趣向に合わせた作業内容を選定したりしながら、障害者の方の社会参加を支援しています。
 また、、ここ数年、県のユニバーサルデザイン推進会議の委員としても参加させていただいいております。
 今日の「ユニバーサルデザイン体験ワークショップ」のお話の流れです。15分しかありませんので、とんでいきますが、まずは背景となる考え、その次にワークショップの仕掛け、事例報告、それから課題と今後の展開ということで構成されます。

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 02  背景となる考え

 先ほど潮谷先生のお話の中でも、ユニバーサルデザインをどう皆さんに意識してもらうかということがありましたけれども、じつは、学校でのユニバーサルデザインに対するアプローチで、すこし障害のとらえ方について、違和感を感じておりました。
学校現場でのこういう教育の中では、よく疑似体験・施設訪問などがなされます。そこでは、「障害の大変さを理解しよう」「障害者・高齢者に優しく」ということがよく言われます。それはいいのですが、実はその段階で終始してしまい、裏の見方をすると、庇護の対象者としての高齢者、障害者、そういうとらえ方になってしまう。「ああ、そこまでか」という気持ちがよく残っておりました。
障害のとらえ方では、ちょっと話が変わりますが、WHOが2001年に国際生活機能分類ということを示しています。この図ですけども。そこでは障害というのは、生活機能の制限ということになるんですが、実は生活機能とは「心身機能」、そして「日常の活動機能」、それから「社会の参加機能」というものであり、この一部が制限される状態を「障害」というふうに位置づけております。
これはすべての人々に合致するものですけど、このそれぞれの機能というのは、下にあります「環境因子」と、そして「個人の因子」によって変化するということです。また、この3つの生活機能がうまく調和していればそれが健康だ、このバランスがうまくとれていなければ、健康な状態ではないという位置づけになります。

これが、障害者にかかわらず誰でもあてはまるということで、もともとは障害分類とついていたんですけども、それが全ての人にあてはまるということで、生活機能分類という表現になってます。 
たとえばどんなに障害が重くても、残存機能を十分にいかせるような環境であれば、日常の活動の生活機能は上がり、社会参加の機能も保証できるということです。
潮谷先生の話でもありましたけど、身体は健常な私たちであっても、たとえば、文化の違う、言葉の違うような環境に入れば、日常の活動、たとえばコミュニケーションというものが制限を受けて、社会参加、たとえば仕事をしたりということが難しくなる。
障害を持つというのは、なにも身体が不自由だというものばかりではない、すべての人達に考えられるものだ、という位置づけです。
このモデルは、「障害者にかかわらず全ての人間にあてはめられる」また、それぞれの生活機能というものは、「環境因子や個人因子というもので、変化することができるんだ」ということです。

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 03  ワークショップの仕掛け

 じつは、我々のワークショップでは、「障害者に限らず、私達すべての人間が感じて楽しめることがある」、それから「環境因子が変わることで、活動や社会参加が変化する」、これに気付けるようなワークショップを作りたいと思いました。
 そのためには、障害をもつ当事者から、ここでは当事者というのを「障害を持つ人」としておりますが、直接その意味を聞き、当事者といっしょに行動する、そういうワークショップにしようということです。
 このワークショップでは、その仕掛けを持ちながら、下の7つを準備しました。
 これがその7つのワークショップです。各コースはそれぞれ1時間ないし2時間程度の所要時間で、ニーズに応じてこれらを組み合わせて、半日・1日コースに組み合わせることも可能です。

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 04 実施事例

 次に、事例です。
 佐賀市内のK小学校で、2008年の3月と6月の2回、当時の6年生に実施しています。それぞれトータルの時間は若干異なりますが、集まりやすくする工夫として「自動車移乗とその意味」、過ごしやすくする工夫として「公園散歩」、色々な感覚を楽しむとして、「視覚以外の感覚体験」、この三つをやってもらいました。
3コースを巡回するわけです。6名の電動車いす使用者、3名の手動車いす使用者、歩行障害者1名、視覚障害者1名、それに補助員が7名ついて、説明員として参加しました。そして終了後に皆さんにアンケートを実施しています。
 これは自動車移乗の時のようすです。
 自動車移乗のコースでは、実際にいろいろな方法で車に乗り込んだり、車いすを積み込む動作を見てもらい、駐車場が広いスペースを必要とすることを理解してもらったり、足の代わりに手でアクセルやブレーキをかけられる車をのぞきこんだり、なぜこんなに一生懸命に乗るのか、自動車は車いすの人にとって、仕事をしたり学校に通うために大きな役割を果たすことや、だからこそ駐車場を確保する必要性、自動車を運転できない障害者にとってはバスや鉄道などの公共交通機関が利用できることの大切さ、そういうことを理解してもらいました。
 二番目のコースは公園の散歩です。
 車いすの人と一緒に公園を散策し、車いすばかりでなく、公園を訪れるお年寄りや子供連れ、その他いろいろな人に配慮した工夫が、公園には為されていることに気付いてもらいました。また、段差があるところでは手伝ってもらったりしながら、ちょっとした手助けがあれば意外に動けると感じたり、トイレなどの障害者用設備も見学し、一緒に楽しむための工夫について理解を深めました。
 三番目は、色々な感覚を楽しむというものです。
 2人一組で一人が目隠しをし、もう一人が手を引いて公園を散策しました。視覚情報を遮断することで、足裏からの触感で路面の状態を知り、日当たりや風を肌で感じ、その風の音で木立や高木の存在を感じ、鳥小屋では鳥の鳴き声を聞いてその数を予想したり、池では自分でエサを撒いて魚の集まる水音でその存在を感じたり、花の香りやグリコの工場から漂うおいしそうなにおい、ちなみに会場は神野公園です、様々な感覚で周りを楽しめることに気付いてもらいました。
 ワークショップのアンケートを集計しました。この2回、時期は違うんですけど、それを全部一括しています。
7段階での評価、「とても良い」「良い」「少し良い」「ふつう」「少し悪い」「悪い」「とても悪い」。この7段階で評価しましたが、2回とも同様の状況だったので、これは2回分をまとめた数字です。色は男女で色分けしています。男女による差違もほとんど見受けられません。
これが一番目のコースの評価です。「とても良い」と「良い」で87%、二番目のコース、「とても良い」と「良い」で75%、三番目のものも85%、それぞれ高く評価をいただけたと考えています。それは個別のコメントからも読み取れます。
 自動車の移乗コースでは、移乗動作に対する記述が120名と非常に多く、そのうちの50名は「移乗はすごい」「びっくりした」とコメントしています。ほとんどの児童は、障害を持つ者が独力で移乗し、車いすの積込みを見るのが初めての体験であったと思われます。移乗動作の迫力に加えて、上肢で運転できる車の構造を見た事も印象深いものだったようです。また、身障者用駐車場の広さの意味や屋根の役割に気づいた者もおり、これらの印象が、身障者用駐車場を設置していくことの意味に結びついたと思われます。
二番目の、車いす利用者との公園散策コースでは、段差やスロープに関するコメントや、トイレに関するコメントが多く寄せられています。
 子供たちはでこぼこの段差など、いろいろな所で介助の手が必要とは感じましたが、スロープやトイレなどの必要性を認識しながら、環境の改善や機器具の活用が少しづつなされている事を実感できたと思います。もちろん、車いすでの移動は大変だとの印象で留まった意見も多いですけれども、公園に限らず、様々な場所での環境の改善や機器具の活用によって行動範囲が広がることには気付いていると思われます。
 最後に、三番目のコース、視覚以外の感覚体験コースということでアイマスクをつけましたが、「目がみえないと怖い」などの障害に対するマイナスイメージの感想も95名、42パーセントありましたが、その一方で梢の音や鳥の声などに対する気付きや驚きが90名、地面や風からの感触に関するものが33名、においについても7名のコメントがありました。
 怖さが優先し、感覚まで楽しむに至らなかった児童も多かったようですが、歩きながら芝生やジャリの違いに気付いたり、鳥の鳴声や風が木の葉そよぐ音に気付いたりと、それなりに楽しんでくれた意見もたくさんありました。
 このワークショップは、「障害者」=「生きていくのが大変だ」というステレオタイプな感想ではなく、「不便なところがあっても、色々な道具の利用や工夫で便利になる」「どこかに障害があっても、他の部分でカバーできる」「自分が思ってもみなかったことに努力をしていた、あるいは工夫がしてあったことに気付く」「視覚を遮断することで、聴覚や触覚や嗅覚の役割に気づく」など、従来もっていた「障害」観から、障害を持つ当事者と一緒に行動することで、「新しい発見や気づき」を感じてもらうことができたというふうに思っております。

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 05  課題と今後の課題

 このワークショップの課題と今後の展開です。
 今回は「公園」の2コースと「バス・自動車」の1コースを利用してもらったものです。その他にもプランは多数あります。「車いすといっしょに路線バス、ノンステップバスに乗ろう」、「一本スティックでのパソコン操作」、「誰もが楽しめるテレビゲーム」、その他いろんなコースを考えています。このような内容の充実は今後も進めていきたい。また、より広範の障害者の皆さんに説明員として力をつけていただけるようにしたいと思っています。
 課題として、営業体制の強化があります。このワークショップはもちろん、有償の活動です。その対価に値する魅力ある教育コンテンツとして今後も売り込んでいきたいと思います。なかなか学校はお金がなくて、これを買おうというところまでなかなか難しい問題があります。しかしまた、障害者のビジネスモデルとしても考えていきたいと思っています。
  「福祉はボランティアで無料」ではありません。この活動は、障害者だからできる仕事であり、健常者が訳知り顔で話しても、当事者の生活体験に根差した話の説得力にはかなわない、そのように考えています。
 本報告は、ユニバーサルデザイン教育のコンテンツとして、ワークショップの提案とその事例報告です。「環境因子の変化により活動や社会参加の状況が変化する」あるいは「障害者に限らず誰にでも楽しめるものがある」そういうことに気づくことを意図し、ワークショップを構築しています。さらに、本ワークショップは障害者にしかできない新しいビジネスモデルとしての位置付けもございます。
 今回は、250名の児童を対象に2つ分野、3コースを実施したので、その結果と今後の課題をまとめました。以上です。

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