![]() 【コーディネーター】 細山UD-Unit 代表 細山 雅一 氏 |
ものづくり分科会では、「佐賀県ユニバーサルデザイン推奨品選定制度」を核としたユニバーサルデザインでのものづくりを更に進めるために、開発の在り方、市場開拓や宣伝・広報のアイデアなど、幅広い議論から「提言を見つけたい」と考えています。 そのキーワードの一つが「地探地創のものづくり」であり、県民の暮らしや伝統の技術・歴史から気付きを得て、それらを活かしたものづくりから優れたユニバーサルデザイン製品が生み出されるのではないかとの仮説です。 先進的なものづくりを進める県内のパネラーに加え、違ったアプローチで成果を上げつつある県外の有職者に加わっていただき、佐賀のユニバーサルデザイン製品づくりに一層の弾みを付けたいと思っています。 |
![]() 【パネラー】 佐賀大学医学部 准教授 松尾 清美 氏 |
佐賀県ユニバーサルデザイン推奨品選定制度は、県内の企業が、開発・生産している製品を申請し、選定委員会で審査後、県の推奨品として制定するもので、2005年から始まり、これまでに16品目が選定されています。推奨品は、生産者と使用者とのコミュニケーションツールであり、この制度は「ユニバーサルデザインで秀でたものづくり」を進める手段の一つです。 私が開発に携わった、人にやさしい椅子「NONA」は、3次元動作解析システムによる起立動作分析、座や背の圧力測定、100名を超える方々の寸法と座位姿勢のデータ分析、カバーの違いによる圧分析の計測などの基礎研究の末に誕生しました。また、S・M・Lの3種からサイズが選べ、背張り調節機能も有しており、開発者、製作者、使用者の三者が集まって進めたものづくりです。 |
| ◎細山氏 人にやさしい椅子「NONA」は、佐賀大学医学部と平田椅子製作所さんが共同して開発・製造されたわ けですが、どのような経緯で両者は出会われたのでしょうか。 |
| ◎松尾氏 佐賀県には、県内に事業所を有する企業、佐賀県などの行政機関、ユーザーなど、開発者、製作者、使 用者の三者が集まるバリアフリー研究会という場があり、そこで平田椅子製作所さんと出会いました。この ような場に来て情報交換することにより、ものづくりが始まることがあります。ものづくりの入り口がどこでも 構いませんが、三者が出会えるようなコミュニケーションネットワークが必要だと思います。 |
![]() 【パネラー】 有田焼卸団地協同組合 青年部長 深海 靖 氏 |
有田焼は、400年続く日本を代表する伝統工芸であり、出荷額は、20年程前の約250億円でピークでしたが、ライフスタイルの変化による家庭での食器需要の低下などにより、ここ数年で4分の1まで落ち込んでいます。また、古来より分業で成り立っており、エンドユーザーの声が製品に反映されにくい状況にあります。 有田焼卸団地協同組合では、2005年から新商品として「匠の蔵」シリーズに取り組み、時代の流に合ったアイテムを決め、その用途に沿って、機能的な形状や新しいデザインを窯元と共同して開発しています。これまでにカレー皿やシチューボウルなどを開発し、一つのジャンルを確立しています。 「匠の蔵」は、ユニバーサルデザインを意識し過ぎない、見た目は洗練され、オシャレで新しく、機能性が抜群にあるものづくりであり、今後も「匠の蔵」ファンやユニバーサルデザインファンに喜んでもらえるような商品を開発していきたいと思います。 |
| ◎細山氏 有田焼卸団地協同組合に加盟されている店舗では、それぞれ伝統や拘りを持たれていると思いますが 、「匠の蔵」の商品開発にあたって苦労されたことなどはありませんか。また「匠の蔵」シリーズの販売実 績はどの程度でしょうか。 |
| ◎深海氏 有田焼卸団地協同組合に加盟している店舗では、それぞれ取り扱っている商品は違いますが、有田焼 の販売が低迷していますので、共同開発することの抵抗感はありません。むしろ、アイテム選びで悩むこと はありますが、開発メンバーが営業の最前線で焼き物を販売していますので、その方々や自分を信じて突 き進んでいます。その結果、焼き物は1万個販売すればヒットと言われますが、「焼酎グラス」は5年前に 販売され約33万個、「カレー皿」は2年前に販売され約11万個、「シチューボウル」は1年前に販売され約 3万個が売れています。 |
![]() 【パネラー】 (株)LCウェルネス 代表取締役 見野 孝子 氏 |
私共は、長寿社会の外出を支援するキャリーバックについて、「産・官・学・民」でコラボし、1人のユーザーに対し聞き手5人でグループを構成しニーズを聞き、詳しくまとめるインクルーシブデザインワークショップを経て、安全性・機能性・デザイン性に優れ使って楽しくなるような基本提案デザインを提供し、地域スキルを活かした試作品を作っています。 キャリーバックは、一人ひとりに基本形フレーム、生地と柄を選んでいただき、1点ずつの縫製を行う受注生産なので、在庫が出ない分安く作ることができ、市販のものに比べ、自分だけのものという満足度を高く感じてもらっています。 これからのものづくりは川上発想ではなく、川下発想で商品の開発、生産、販売にユーザーが加わり、一体感や共感がなければなかなか「もの」が売れないのではないかと思います。 |
| ◎細山氏 キャリーバックは「産・官・学・民」でコラボされて試作品が作られていますが、資金的なサポートはありま したか。また、受注生産はコスト高と直感的に思えるのですが、受注生産だからコストが安いと話された理 由を教えていただけないでしょうか。 |
| ◎見野氏 キャリーバックを作るための全事業費は120万円、うち80万円は行政からの助成をいただき、残りの4 0万円は自社で負担しています。また、受注生産をすることにより在庫が発生せず、自分だけのものという 満足感が高ければ売れますし、購入してくれる人がいればすぐに作るという回転性の良さがあります。大 量生産ではなく長く続くベストセラーのような形が良いと思っています。 |
![]() 【パネラー】 (有)アイ・シー・アイデザイン研究所 代表取締役 飯田 吉秋 氏 |
弊社が商品開発した「KISS」は、ペットボトル等に装着するシリコン製のキャップで、倒しても逆さにしても中の液体がこぼれることがなく、その一方で軽く噛むと飲み口が適度に開きます。この商品は、私の父の介護経験から生まれたもので、身近なところにある問題点を丁寧に探り出し、何を解決すべきかを広い出し解決の糸口を先達の資産や学習から得ました。 弊社の具体的なデザイン手法は、「見る・観る・視る・看る・診る」を基盤にした考え方のミルメソッドで推進しています。この5つの「みる」により、感性価値の創造、商品の発想、人への配慮、そして、笑顔のデザインが実現することになります。 売れる商品開発とは、つくり手と顧客がお互いに利益満足が続かなければならず、目標を立て目的を明確化し最後までぶれないことが大切であると思います。 |
| ◎細山氏 事例発表の中でユニバーサルデザインという言葉がほとんど聞こえて来なかったのですが、飯田さんの 中でユニバーサルデザインをどのように捉えているのでしょうか。 |
| ◎飯田氏 ものづくりにおいて、視覚などのバリアがあることはデザインとして欠陥があることになりますので、3年 前まではユニバーサルデザインという言葉を使わないことにしていました。しかし、新聞報道などによりユ ニバーサルデザインは安心される言葉と理解されるようになりましたので、最近はユニバーサルデザイ ンという言葉を使うようにしています。なお、ものづくりにおいて、最初からユニバーサルデザインを組み 入れることが重要だと思います。 |
| ◎参加者 「KISS」は、飯田さんの父の介護上の問題から開発された商品とお聞きしましたが、カタログにはそのこ とが突出していません。この商品は、大人でも使えるデザインになっているし、洒落た雑貨店に置いても良 いものになっており、ユニバーサルデザインに縛られず、一般的な商品として捉えることができると思いま す。佐賀の「地探地創」について詳しく理解していませんが、佐賀という土地に限定することにより、縛りが 出たり、自由度が制限されるようにも思えるのですが、どうやって解決していくのかお聞きします。 |
| ◎松尾氏 私は交通事故により足が動かないという障害を負いましたが、その縛りが私のライフワークを決めてくれ るきっかけになりました。佐賀は優秀な諸富家具や有田焼、唐津や有明海には美味しい材料がたくさんあ り、農地が広がっています。このことを縛りと見るのではなく利点として考えていただけたらどうでしょうか。 |
| ◎細山氏 有田焼は日本を代表する伝統的技法や歴史を持っていますが、その中に新しいものづくりとしてユニバ ーサルデザインの考え方を取り入れていく時に縛りやジレンマのようなものを感じたことはありませんか。 |
| ◎深海氏 有田焼では、ユニバーサルデザインを意識せずに商品を開発しています。佐賀はいろんなものがありま すが、PR下手で地味なため、埋もれてしまっていると思います。推奨品に「匠の蔵」は4点選定されていま すが、焼き物に限らず、もっとライバルから出品していただき、お互いのレベルアップに繋げていきたいと 思っています。 |
| ◎細山氏 飯田さんの会社は大阪ですが、この会場に来られて「匠の蔵」「人にやさしい椅子」や佐賀の物産などを ご覧になってどのように感じましたか。 |
| ◎飯田氏 弊社のカタログは3作目で、1作目は介護のことを書いていましたが、高齢者から普通の商品にしてほし いとの意見があり、バリアがないというのも書かないようになりました。また、縛りという言葉がありましたが 、縛りがある中で何が一番大事なのかを見つけ出す良いチャンスでもあると思います。私は、佐賀の「地 探地創」の考え方も佐賀県全体のユニバーサルデザインの取り組みも素晴らしいと思います。 |
| ◎参加者 「産・官・学・民」で様々な取り組みがありますが、例えば「官」の役割として補助事業としてお金を出す以 外にどのような役割を期待されているのかお聞きします。 |
| ◎松尾氏 佐賀県では、ユニバーサルデザイン推奨品を選定していますが、この推奨品を体験でき、PRできる「場 所づくり」、そして、それを理解できる「ひとづくり」をやっていただきたいと思います。 |
| ◎細山氏 佐賀県では、ユニバーサルデザイン推奨品選定制度を核としながら、実践講座、流通の販路拡大、広報 など極め細やかなサポートを実施しています。これ以外の方法も当然ありますが、参考にしてみてはどうで しょうか。 |
| ◎参加者 私は、佐賀に来て29年になりますが、言葉の縛りがあります。その縛りを乗り越えてどこまで自分の日 本語が通じるかはとても大事なことだと思います。佐賀の人は、もっと自分の故郷に自信を持ってほしいし 、自然に恵まれている佐賀を、全国の皆さんにもっと知ってほしいと思います。 |
| ◎細山氏 最後にパネラーの方から今後のものづくりについての抱負や全国に向けてのものづくりなどの提案をお 聞きしたいと思います。 |
| ◎飯田氏 私は、「見る・観る・視る・看る・診る」を基盤にした考え方を持っていますが、素材についてはフォロー出 来ていないと考えています。素材はものづくりの基本ですので、その情報を全国から集めて、ベースになる ようにしていただきたいと思います。 |
| ◎見野氏 定年を迎えて平均寿命までの生活を価値のあるものにしていくためのマーケットはこれからも発展してい きます。欲しいものが欲しいという物使いの人たちの想いをものづくりの人たちが分かっていただきたいと 思います。また、ものづくりにユーザーが加わり共感していくことがとても大事だと思います。 |
| ◎深海氏 日本磁器発祥の地としての有田焼の文化を守りながら、「匠の蔵」のような新しい文化を情熱あるものづ くりとしてしかっり確立し、有田が、そして、佐賀が元気になるように大きな目標を掲げてこれからも取り組 んでいきたいと思います。 |
| ◎松尾氏 ユニバーサルデザインが基礎であることを県民の皆さんや県職員が理解し、佐賀に住みたいまちづくり 、ものづくり、こころづくりなどユニバーサルデザインの考え方が植えつければ、佐賀は本当に良いまちに なると思います。佐賀を自慢したい、佐賀の良いところを全国に、そして世界に知ってもらって、佐賀に住 みたくなるようなものづくりを進めていきたいと思います。 |
| ◎細山氏 分科会のコーディネーターをさせていただいて感じた点が3点あります。 1点目は、皆さんが異口同音で話されましたとおり、「ユニバーサルデザインはものづくりの前提である」 ということです。2点目は、先程、見野さんが「共感」という言葉を使われましたが、ものを作る側と使う側が 一緒に関わってものづくりをすることが大事であると捉え「共関」とメモを取りました。この言葉が「地探地創 」と主張している我々に最も近い表現ではないかと思います。3点目は、佐賀県は中小の企業が多いので すが、それをマイナスとして捉えるのではなく、小回りの利く良さをどうやって活かしていくかを考えれば、チ ャンスは広がってくるし、良いものづくりに繋がっていくと感じました。 |
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